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51歳男 20代のとき手相見の事務所まで押しかけた

占い師に見てもらう習慣はないのだけれど、20代半ばのときに手相見にさんざん話を聞いたことが1回だけある。その手相見に会ったのは神田神保町の近くだった。夜に街頭に椅子を出して手相を見てくれるあれだ。私は職場の同期と二人で飲んだ帰り。20代と言えば恋愛の悩みは尽きない。特に私は奥手だったし、なかなか女の子と付き合っても長続きしないのが悩みの種だった。ちょうどそのとき、ヨーロッパ旅行中に知り合った女性(日本人)と付き合っていた。私たちが知り合ったとき、私は夏休みのヨーロッパ旅行中、彼女はイギリスに留学に行く途中だった。当然、遠距離恋愛になる。「彼女とはうまく行くんでしょうか?」。私より少し年上らしい、誠実そうな男性の手相見にそう訊ねた。見料は千円くらいだったはず。何を言われたのか、もう覚えていない。でも酔っぱらった勢いもあって、私はもっと話が聞きたいと、日を改めて彼のところ(事務所?)まで訪ねていく約束をした。手相見のおにいさんに教えられた場所は、五反田の駅から少し歩いた住宅地だった。約束した日に訪ねて行ってみると、二階建ての古ぼけたアパートがぽつねんと建っていた。このアパートの2階の部屋で、おにいさんは律儀にも私を待っていてくれた。ほとんど荷物も置いていない、殺風景な和室だったのを覚えている。おにいさんはここで初めて、彼がある神道系の新興宗教の信者であることを告げた。その後、30分くらい話をしたが、最後に彼は私に言った。「もうこれ以上は、一緒に同じ信仰の道を歩んでいってもらえないと話せません」。要するにお引き取りを願いたいということである。考えてみれば若気の至り。危ない目にあわなくてよかったと思う反面、少し気の弱い手相見のおにいさんには悪いことをしたなと思う。でも私なりに彼女との仲を続けていきたいと必死だったのだ。もう今その手相見のおにいさんに街頭で会っても、絶対に分からないだろう。そして肝心の彼女だが、数か月後には分かれることになった。ほろ苦い青春の思い出である。